伊勢原のバリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくり

伊勢原市役所くるりん窓口

幼い子どもの手を引いた母親が手続きなどのために訪れる市役所の窓口では、市の公式キャラクターアニメの笑顔が出迎えます。「かわいい!」ほんの少しの時間でも子どもが喜んでくれると、周りの知らない人同士の雰囲気も和んで母親も穏やかに用事を済ますことができます。また、外出先ではトイレやエレベーターの案内表示がことのほか頼りになりますが、近年ピクトグラム(情報が伝わりやすく単純化された絵文字)化が進み、慣れない場所であっても行動しやすい環境が整っていることで安心して過ごすことができます。では、ユニバーサルデザインとは何か、また、その効果とは、と問われてもすぐに答えられる人はごく僅かでしょう。「自動ドア」に代表されるように誰にとってもあまりにも便利でありながら、当たり前になっていて人は認識しなくなっているのです。福祉が先進的なデンマークでは、地方の一家庭から首都コペンハーゲンのおしゃれなホテルにいたるまでのあらゆる場所で、デザイン性機能性に優れた片手で補充できる同一のトイレットペーパーホルダーが使われていて、驚きました。誰でもどこにいても同じものを使う意味や姿勢に、共に生きる決意を見る思いがしました。

 バリアフリーについては、2006年に策定された「バリアフリー法推進化要項」によって地方自治体においても道路や歩行者空間、公共建築物、公園整備等が進み、スロープや車椅子使用者用トイレが設置されたことで車椅子使用者は飛躍的に外出しやすくなりました。しかし、2020年に実施された文部科学省による全国の国公立小中学校、特別支援行を対象とした「学校施設におけるバリアフリー化の状況調査」では、車椅子使用者用トイレの整備は65.2%、エレベーターはわずか27.1%と言う実態です。コロナ禍にありながらも開催に踏み切ったオリパラ東京大会では、障がいの有無にかかわらず、だれもが互いに尊重し合い支え合う「心のバリアフリー」が推進される契機となると期待されましたが、その効果は限定的でした。インクルーシブ教育が提唱され、災害時には避難所としての活用される学校施設は、地域にとっても重要性は増すばかりです。バリアフリー化はなぜ進まないのか。それぞれの地域から必要性を訴える声を挙げ、整備を迅速に進めていくことが求められます。

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